「プレイングマネージャー」という言葉は聞こえがいい。でも実態は、常に間に入り続ける人間だ。
依頼者と開発者の間。上司と部下の間。経営層とよその部長の間。自分はテックリードでありながら、ビジネスと技術の翻訳係でもある。どちらの世界にも属していて、どちらの世界にも完全には属していない。
本当の1日
きれいな時間割を書くのは簡単だ。「午前はコーディング、午後はマネジメント」みたいな。
でも実際には、コードを一行も書けずに終わる日がある。誰かの話を聞きに行って、面接が入って、それで終わる。「今日も書けなかった」と思いながら帰る。
コーディングに集中できる時間は1日の30〜40%。良い日の話だ。管理業務が重なった日は、もっと少ない。採用書類の確認、SOPの更新、経営層へのブリッジ資料の作成——これらが積み重なって、気づくとコードを書ける時間が消えている。
「翻訳係」という役割の孤独
このポジションには、独特の孤独がある。
開発の話を経営層にしても伝わらない。組織の話を開発メンバーにしてもピンとこない。両方の言語を話せるから間に立てるのだが、両方の言語で話しているからこそ、どちら側からも完全には理解されない。
誰にも理解されない。されようがない。
技術的な深夜残業の孤独とは違う孤独だ。誰かに相談できる相手がいないというより、自分が立っている場所を共有できる人間がそもそもいない、という孤独だ。
係長昇格後に変わったこと
主任(テックリード)から係長になって最も変わったのは、意思決定が組織の構造に直接影響するようになったことだ。
主任のときは「この機能をどう実装するか」を決めていた。係長になってからは「このチームにどんな人材が必要か」「どんな組織構造にするか」を考える比重が増えた。
- 採用要件の定義:どのスキルセットのエンジニアを採用するか
- 役割の明確化:誰が何を担当するかの設計
- 技術ガバナンス:AIツールの利用基準・開発フローの標準化
コードを書く量は減った。でもそれが正しい変化だと思っている。
「全部やる」ことの持続可能性
正直に言うと、今の状態は長くは続かない。
チームが大きくなれば、コードも組織も両方を高品質に保つのは物理的に無理だ。どこかで「マネジメントに専念するか、技術を深めるか」を選ぶ必要が出てくる。
今の答えは「今は両方やる。でも組織が安定したら段階的に権限委譲する」だ。ブリッジ人材やテックリードを採用して、自分はより上位の技術戦略と組織設計に集中していく方向を目指している。
目標は、自分が暇になること。それはずっと変わっていない。
翻訳係として生き残るために
「全部わかってくれる人間がいない」という事実とは、折り合いをつけるしかない。
自分がとったのは、わかってもらおうとするのをやめることだった。経営層には経営の言葉で話す。開発メンバーには技術の言葉で話す。自分が何者かを説明するより、相手に必要な言葉を選ぶ。
孤独は消えない。でも「誰にも理解されないこと」を嘆くより、「両方の世界を理解していること」を自分の武器にする方が、前に進める。
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