「最終面接、通しますか?通しませんか?」
本部長から言われることはそれだけだった。採用要件の整理も、候補者への訴求も、カジュアル面接での印象確認も、全部自分がやってきた後に返ってくる言葉がそれだ。
いつからか、全てを諦めて自分で採用戦略ごと設計するようになった。
訳もわからず一次面接に引きずり込まれた
最初の採用は、システムローンチが落ち着いた頃に始まった。本部長が「人を増やしたい」と言って、自分に一次面接に入るよう言ってきた。
面接の経験はほぼなかった。何をどう聞けばいいかもわからなかった。形式的に進めるしかなかった。「面接みたい」な面接だった。
それでも最初に入ったメンバーは優秀だった。完全未経験だったが、飲み込みが早く、チームに風が入った感じがした。
その人が辞めたとき、少し堪えた。
問題採用を経験した
また本部長が「人が欲しい」と言った。また一次面接に入った。
書類選考のとき、若いのにしっかり書けているなと思った。若さをポテンシャルと見て、通過にした。
入社後、何かが噛み合わなかった。新しいことをやりたがらない。面接で「自分で勉強する」と言っていたが、そう見えなかった。居眠りが続いて、最終的に三者面談になった。
採用に関わった自分がこたえた。「若いという理由で通した」という判断を悔やんでいる。
人事部長に言っても「システムのことはわかりません」
運用管理担当が退職したとき、さすがに本部長に伝えた。「このままだとまずい」と。
本部長は採用に動く素振りを見せた。ただ、プロセスは変わらなかった。こちらが候補者の情報を整理して伝えても、返ってくるのは「通しますか、通しませんか」だけ。
人事部長は「自分はシステムのことがわからないので」というスタンスを一貫して崩さなかった。
エンジニア採用において、人事が「技術はわからない」で止まるなら、何のためにいるのかわからなくなった。孤独は、また一段階増した。
諦めて、全部自分で持つことにした
支援を期待するのをやめた。
採用戦略から設計することにした。どういうポジションで、どのスキルセットの人が必要で、何を訴求すれば刺さるか。カジュアル面接の設計も変えた。
最初は形式的な場になっていた。候補者にとって「面接の前段」みたいな空気だったと思う。
変えたのは、こちらから先に話すことにしたことだ。今のチームの状況、どんな仕事か、正直なところを話してから、相手が何を重視しているかを聞く。「活躍できそうか」より先に「この環境が合う人かどうか」を測るようになった。
一方的に選考するより、情報交換に近い場にした方が、互いにとって誠実だと思っている。
採用を「やらされ仕事」にしない理由
正直に言うと、採用担当という役割は望んで引き受けたものじゃない。品質管理部門へのサイレント人事もそうだ。誰かがやらなければいけないから、自分がやっている。
ただ、どうせやるなら市場価値に変えると決めた。
「採用面接の経験がある」「採用戦略の設計ができる」は、エンジニアとしてのキャリアを厚くする。誰も評価しなくても、自分のスキルとして積み上がる。
そう考えるようになってから、採用が少し違うものに見えてきた。誰かに与えられた仕事ではなく、自分が自分のために設計している仕事、という感覚に近い。
それでも、問題採用を防げなかった後悔は残っている。「若い」だけで通した判断を、次に活かすしかない。
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