島流しの先にエンジニアがあった——30歳からの転身の現実

ドラッグストアの主任から、転勤続きで限界が来てエンジニアへ転身。就活地獄・休職・技術が身につかない恐怖を経て、今の会社で初めて「天国」と思えた話。

屋久島に転勤が決まったとき、「もう無理」と思った。

福岡生まれの福岡育ちで、30歳で初めて沖縄に一人暮らし。それだけでも大変だったのに、次の転勤先が屋久島だった。島流しかよ、と思った。冗談じゃなく。

削ぎ落としてみたら、何が残ったか

転職を決めてから、自分に何が残っているかを考えた。

接客はそもそも向いていなかった。コミュ力が高いわけじゃない。愛想よく振る舞っていたのは、仕事だからだ。何年やっても得意になった感覚はなかった。補充業務、在庫管理、発注、倉庫整理——手を動かす仕事は嫌いじゃなかったけど、それがしたくてドラッグストアに入ったわけじゃない。

「ではなんだ」と削っていったら、大学の授業でプログラミングだけ楽しかったという記憶が出てきた。

それと、福岡に帰りたい。二度と飛ばされたくない。それだけだった。

転職活動の現実

半年、実家に転がり込んで猛勉強した。仕事はしなかった。親に世話になった。申し訳なかったし、後ろめたさもあった。父は「もったいない」と言った。割と大手だったから、世間的にはそう見えるのかもしれない。無視した。

転職活動は地獄だった。何百社送ったかわからない。30歳超え、完全未経験。自分が採用担当でも取らない人材だということはわかっていた。それでも送り続けた。

1社目:メンタルが折れた

なんとか社内SEとして採用されたのが、中小の製造業だった。

環境の話はあまりしたくないが、1社目は一番きつい時期だった。メンタルを崩して休職した。詳細は書かないが、「エンジニアになるのは間違いだったかもしれない」と本気で思った時期があった。

その後、半年ほど仕事していなかった。

2社目:安全すぎる場所の怖さ

次は246名規模の人材系の会社に入った。インフラ・ヘルプデスク中心の情シスで、人はよかった。環境もホワイトだった。

ただ、給料は最低賃金かよというくらい低くてボーナスなし。そして何より、技術が身についていかない感覚があった。30代半ばに差し掛かって、「このまま何も積み上がらないまま年だけとっていくのか」という恐怖が出てきた。

またメンタルを崩すのが怖かった。でも将来への焦りが上回った。転職することにした。

3社目:今の会社に入るとき

今の会社の面接は、本部長が出てきた。

やや圧迫気味で、「その程度の能力ですね」みたいなことを言われた。傷ついたが、後から働いてわかったのは、この人は悪意があるんじゃなくて、ナチュラルに偉そうなだけだということだ。

面接の中で「今スキルが低くても、勉強しながらでいいから。環境は用意できる」と言われた。不安はあったけど、この一言で決めた。

今の仕事は、初めて「天国」だと思った

入社してから気づいたのは、技術の仕事は自分にとって苦にならないということだ。

接客は何年やっても「仕事だからやっている」という感覚があった。技術は違う。好きで始めたから、長時間やっていてもそこまで消耗しない。初年度は400万にも届かない給料だったが、なんとも思わなかった。

当時もし誰かに「生涯年収で考えたら損では」と言われていたら、どう答えただろう。「今は気にならない」と言っていたと思う。それが本当のことだったから。

その後1年で主任、さらに係長に昇進した。今は600万を超えるくらいまできた。

上手くいきすぎていて、怖いくらいだ。

前職が意外なところで役に立っている

接客業のことは「向いていなかった」と書いたが、向いていなかったなりに何年もやってきた経験は、思わぬ場面で出てくる。

現場の人間が「本当に困っていること」を話してくれるかどうかは、こちらの聞き方次第だということを、クレーム対応で嫌というほど学んだ。要件定義でユーザーヒアリングするとき、あの経験は確かに出てきている。

後輩を育てるときも、主任として新人を育てた経験はある。「できないことを責めるより、できたことを認める」というやり方は、ドラッグストア時代に試行錯誤して行き着いたものだ。

好きでやっていた仕事じゃないが、やってきた時間がゼロになるわけじゃない。

転身を考えている人へ、正直に言うと

「最初の2年はつらい」とよく言われる。自分の経験で言えば、「つらい2年」は今の会社に入る前の話だった。今の仕事はつらくない。向いていることをやっているからだと思っている。

転身が怖い人は多いと思う。自分も怖かった。休職して、半年仕事できなくて、ようやく入った2社目が安すぎて、それでも転職した。そこまでやる必要はないと思うが、向いていないことを続けるよりは、まだましだと今は思っている。

父には今でも「あのまま続けていれば」と言われることがある。答えないようにしている。


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