はじめに
フロントエンドの技術選定で「Next.js使います」と即答するエンジニアは多いですが、なぜNext.jsなのか、どのレンダリング方式を使うのかまで答えられる人は意外と少ない気がします。
私は現在、医療系スタートアップの治験CRM(React SPA)とこのブログ(Astro SSG)の2つのフロントエンドを運用しています。まったく異なる技術選定をした背景を整理しながら、判断基準を言語化してみます。
治験CRMでReact SPAを選んだ理由
治験CRMは医師・CRC(臨床研究コーディネーター)が日常的に使う業務システムです。この性質から以下の判断をしました。
認証必須のプライベートアプリ。ほぼすべての画面がログイン後にしか見えないため、SEOは不要です。SSRでサーバーサイドでHTMLを生成するメリットが薄い。
インタラクティブな操作が多い。フォーム入力、リアルタイムバリデーション、モーダル、ドラッグ&ドロップ。これらはクライアントサイドのstate管理が本質であり、SPAの得意領域です。
APIはNestJS(別オリジン)で管理済み。すでにバックエンドのAPIサーバーが存在するため、Next.jsのAPI Routesは不要です。
// CRMのようなSPAでは、クライアント側のキャッシュとstate管理が核心
const { data: trials, isLoading } = useQuery({
queryKey: ["trials", filters],
queryFn: () => fetchTrials(filters),
staleTime: 1000 * 60 * 5, // 5分キャッシュ
});
このブログでAstro SSGを選んだ理由
ブログは治験CRMとは正反対の特性を持ちます。
- コンテンツは静的: 記事を書いたら内容は変わらない
- SEOが重要: 検索流入を増やしたい
- インタラクティブ性は最小限: 記事を読むだけ
この条件に「ビルド時にすべてHTMLを生成するSSG」がぴったりはまりました。Astroを選んだのはNext.jsよりもさらに「静的サイト特化」で、デフォルトでJavaScriptを一切クライアントに送らない設計だからです。
パフォーマンスとコストの両面でも、S3 + CloudFrontで静的ファイルを配信するシンプルな構成が最適解でした。
App Router vs Pages Routerの使い分け判断
Next.jsを使うと決めた場合のApp Router vs Pages Routerの判断基準です。
App Routerを選ぶとき:
- React Server Componentsを積極的に使いたい
- ネストされたレイアウトを複数定義したい
- データフェッチをコンポーネント単位で管理したい
- 新規プロジェクトで長期的に保守する
Pages Routerを選ぶとき:
- 既存のPages Routerプロジェクトのメンテナンス
- チームがApp Routerに不慣れで学習コストを払えない
getServerSideProps/getStaticPropsで運用が安定している
個人的にはApp Routerのuse server/use clientの使い分けがチーム全員に浸透するまでに時間がかかると感じているので、チームの習熟度が判断の最大要素だと思っています。
CSR / SSR / SSG / ISRのユースケース
| 方式 | タイミング | 向いているケース |
|---|---|---|
| CSR | ブラウザ | 認証後の業務画面、ダッシュボード |
| SSR | リクエスト時 | ECのカート画面、ユーザー固有データを含むページ |
| SSG | ビルド時 | ブログ、ドキュメント、マーケティングLP |
| ISR | ビルド後に再生成 | ニュース、頻繁に更新されるが全ページSSGは重い場合 |
ISRは「SSGの速さとSSRの鮮度のいいとこ取り」ですが、revalidateの設定ミスでキャッシュが古いまま残るリスクがあるため、キャッシュ戦略の設計に注意が必要です。
// App RouterでのISR設定例
export const revalidate = 3600; // 1時間ごとに再生成
// または動的に設定
export async function generateStaticParams() {
const posts = await fetchAllPosts();
return posts.map((post) => ({ slug: post.slug }));
}
実務での判断基準チェックリスト
技術選定時に自分が使っているチェックリストです。
CSR(SPA)でいい条件
- SEOが不要(認証後のみアクセス可能)
- [ ]インタラクティブな操作が多い
- [ ]バックエンドAPIが別途存在する
- [ ]リアルタイム更新が必要
SSGが最適な条件
- [ ]コンテンツが頻繁に変わらない
- SEOが重要
- [ ]インタラクティブ性が低い
- CDNで静的配信したい
SSRを選ぶ条件
- [ ]ユーザーごとに異なるデータを表示する
- SEOが必要かつデータが動的
- [ ]リクエスト時の認証状態を見てページを出し分けたい
まとめ
「とりあえずNext.js」ではなく、プロダクトの性質を見て技術を選ぶことが大切です。
- 業務システム(認証済み・インタラクティブ) →React SPA
- ブログ・ドキュメント(静的・SEO重視) →SSG(Astro or Next.js)
- ECサイト・ニュース(動的・SEO重視) →SSR or ISR
判断軸は「SEOが必要か」「データは静的か動的か」「リアルタイム性が必要か」の3点に尽きます。この軸を持っているだけで、技術選定の説明責任を果たせるようになります。
実装例: この記事で触れたReact SPAとSSGの判断を実際に適用したプロジェクトはポートフォリオで確認できます。